胃は袋状の形をしており、みぞおちの裏あたりにある器官です。胃の入り口を「噴門(ふんもん)」、出口を「幽門(ゆうもん)」といいます。胃は、噴門側から「胃底部」、「胃体部」、「幽門部」の3つの部位に大きく分かれ、胃の壁は内側から「粘膜」、「粘膜下層」、「固有筋層」、「漿膜(しょうまく)下層」、「漿膜」とよばれる層になっています(図1)。
日本胃癌学会編:「胃癌取扱い規約第15版」(金原出版),p3 2017
がん情報サービスを基に作図
胃がんは、胃壁の粘膜の細胞がなんらかの原因でがん細胞となり、がん細胞が増えて周りに広がることで粘膜から外側へと進行していきます。
胃がんのリスクを高める要因として、喫煙やヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の感染などが挙げられます。タバコを1日20本以上吸う人はまったく吸わない人に比べて2倍1)(男性の場合)、ピロリ菌に感染している人は感染していない人に比べて5.1倍2)、それぞれ胃がんになりやすいと言われています。また、塩分の多い食事も胃がんのリスクを高めることが報告されています3)。
1)Sasazuka S, et al.: Int J Cancer. 101(6); 560-566, 2002
2)Sasazuka S, et al.: Cancer Epidemiol Biomarkers Prev.15(7); 1341-1347, 2006
3)日本臨床腫瘍学会編:新臨床腫瘍学改訂第7版, 2024, p.421, 南江堂
胃がんになっても、初期にはほとんど自覚症状はありません。
みぞおちの痛みや不快感・違和感、腹部の張り、胸やけ、吐き気、食欲不振などの症状がみられることがありますが、これらは胃がんだけにみられる症状ではありません。

みぞおちの痛み

腹部の張り

胸やけ

吐き気
笹子三津留:インフォームドコンセントのための図説シリーズ胃がん 改訂3版, 医薬ジャーナル社, 2018, p38を基に作図
がんが進行すると、食べたものがつかえる感じがする、吐血、黒い便、腹部のしこりなどのほかに、体重減少や貧血症状(めまいや息切れ)、疲れやすさなどの症状があらわれることもあります。ただし進行しても症状がない場合もあり、 症状のあらわれ方には個人差があります。

ふらつき、めまい

吐血
笹子三津留:インフォームドコンセントのための図説シリーズ胃がん 改訂3版, 医薬ジャーナル社, 2018, p40を基に作図
さらに進行すると、胃がん自体、あるいはがんの周囲のリンパ節が胆道を圧迫し、胆汁の流れが悪くなって黄疸になることがあります。また、胃がんが転移した部位によっては肝不全や呼吸不全、意識障害、骨折などさまざまな症状があらわれることもあります。(リンク:胃がんの診断と治療 再発・転移)
胃がんの早期発見のためには胃がん検診を定期的に受けることが大切です。上記のような気になる症状があれば医療機関へご相談ください。
胃がんは日本で患者数(罹患数)が3番目に多いがんで、1年間に約11万3000人(2021年)が胃がんと診断されています。さまざまながんの中で男性、女性ともに肺がんに次いで4番目となっています(表)。年齢別にみると、胃がんは男女とも50歳以降から増加し、高齢になるほど多くなっています(図2)。
胃がんによる死亡者数は1年間に約3万9000人(2023年)で、肺がん、大腸がん、膵臓がんに次いで4番目に多いものの4)、最近は男女ともに死亡者数は減っています(図3)。胃がんの死亡者数が減っている要因として、患者数の減少や胃がん治療・検査技術の向上のほか、がん検診の普及などもあげられます。
胃がんは、早期に発見し適切な治療を受ければ治癒の可能性もあり、ステージⅠ(ステージ分類については『治療方針の決定』を参照)の場合には5年生存率は90%を超えています(院内がん登録2014-2015年5年生存率集計, ネット・サバイバル)。しかし、初期の胃がんには自覚症状がほとんどありません。そのため、がん検診を定期的に受けて、なるべくはやく発見することが大切です。また、気になる症状があれば、がん検診を待たずに医療機関を受診しましょう。
4) 国立がん研究センターがん情報サービス「最新がん統計」, https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html (2025年12月閲覧)
がんの統計2025部位別がん罹患数(2020年)
胃がん
出典:公益財団法人 がん研究振興財団「がんの統計2025」
年齢階級別がん罹患率推移:1980年、2000年、2020年
胃がん
出典:公益財団法人 がん研究振興財団「がんの統計2025」
年齢階級別がん死亡率推移:1980年、2000年、2023年
九州大学大学院
先端医工学診療部 教授
沖 英次(おき えいじ)先生
| 日本内視鏡外科学会 | 技術認定医・ロボット |
|---|---|
| 支援手術プロクター | |
| ・評議員 |