治療方針の決定

 2021年10月 公開 監修:がん研究会有明病院
消化器外科 胃外科部長
布部 創也 先生

胃がんを診断するには?

診断までの流れ

厚生労働省は、男女ともに50歳を過ぎたら2年に1回の胃がん検診を受けるよう推進しています。
検診などで胃がんが疑われた場合、胃がんであるかを確定する検査を行い、胃がんと確定すれば、治療方針を決めるために、がんの進行度を調べる検査を行います。

図1胃がん診断の流れ

比企直樹:よくわかる最新医学胃がん 初版, 主婦の友社, 2016, p27より作図

胃がんを見つけるための検査

胃がん検診として推奨されている検査方法は内視鏡検査とX腺(バリウム)検査の2つです。また、胃がんのリスク検査としてABC検診があります。

X線(バリウム)検査:

バリウムを飲んで、胃の形や胃の壁の状態などをX線で調べます。異常がある場合は内視鏡検査を行います。

内視鏡検査:

胃の内部を直接観察して、がんが疑われる部分の場所やその広がり、深さを調べます。粘膜を採取して、病理検査を行い、がんを確定します。

ABC検診:

ヘリコバクターピロリ抗体検査と胃粘膜の萎縮の程度をみるペプシノーゲン検査を併用して発症リスクを調べる血液検査です。A、B、C、D群に分類され、A群がもっともリスクの低い群になります。人間ドックなどの健診で行われていますが、胃がん検診に代わるものではありません。

がんの進行度を調べる検査

がんの広がりや転移の有無などを調べるために、腹部超音波検査やCT検査などの画像検査を行います。

超音波内視鏡(EUS)検査:

がんが胃壁のどれくらいの深さまで達しているか、胃の周囲のリンパ節に転移しているかを調べるために、超音波を発する内視鏡を用いる場合もあります。

腹部超音波検査:

超音波を利用して、リンパ節や肝臓への転移の有無、腹水の有無などを調べます。

CT検査:

CT検査はX線を使って、体の内部を調べる検査です。がんの広がりやリンパ節への転移の有無、肺や肝臓などほかの臓器への転移の有無などを調べます。

MRI検査:

MRI検査は磁気を使って、体の内部を調べる検査です。CT検査などで転移が確定できない場合に行います。とくに肝臓への転移の有無を調べるのに有用です。

胃がんの分類(種類)

胃がんは、顕微鏡で観察した際のがんの組織型と、がんの進行度(病期、ステージ)から分類されています。

組織型による分類

胃がんは組織型から「一般型」と「特殊型」に大きく分けられ、さらに一般型は、増殖の仕方の違いから、
まとまって増殖するタイプの「分化型」と、バラバラに広がって増殖するタイプの「未分化型」に分けられます(図2)

図2胃がんの組織型

日本臨床腫瘍学会編:新臨床腫瘍学 改訂第5版, 2018, p.448, 南江堂
有森和彦:がんチーム医療スタッフのためのがん治療と化学療法 第3版, 2012, p39,じほうを基に作表

一般に、分化型は高齢者で比率が高く、進行が緩やかなものもあり、未分化型は比較的若年女性で比率が高く、分化型に比べて悪性度が高いといわれています(図3)。また、「スキルス胃がん」は未分化型が多く進行が早いため、診断が遅れてしまうことがあります。

図3分化型と未分化型の特徴

※1 がん細胞が血管に入り込み、血液の流れに乗って、別の場所に転移すること
※2 がんが周囲の組織を圧迫するように大きく成長すること
※3 播種は種がまかれるように体の中にバラバラと広がることで、腹膜(お腹の中)に広がることを腹膜播種という
※4 がんが周囲の臓器に染み出るように広がっていくこと

日本臨床腫瘍学会編:新臨床腫瘍学 改訂第5版, 2018, p.449, 南江堂
有森和彦:がんチーム医療スタッフのためのがん治療と化学療法 第3版, 2012, p41,じほう
笹子三津留:インフォームドコンセントのための図説シリーズ胃がん 改訂3版, 2018, p28-29, 医薬ジャーナル社
樫田博史、医療情報科学研究所編:病気がみえる vol.1消化器 第5版, p120, 2016, メディックメディアより作図

病期(ステージ)による分類

胃がんは、胃の壁の内側(粘膜)に発生し、大きくなるにしたがって胃の壁の外側に向かって深く進んでいきます。がんが粘膜または粘膜下層にとどまっているものを「早期胃がん」、固有筋層より深く達しているものを「進行胃がん」といいます(図4)
なお、早期胃がん、進行胃がんという分類は、実際の進行度を示すものではありませんが、早期胃がんはリンパ節やほかの臓器に転移していることが少なく、進行胃がんではより深くまで達しているほど他臓器への転移が多くなることが知られています。

図4胃がんの病期(ステージ)

国立がん研究センターがん情報サービスを基に作図

胃がんの進行度は、①がんの深さ(深達度)、②リンパ節転移の状態、③他の臓器への転移(遠隔転移)の有無、の3要素から分類します。この分類法は、3つの要素である腫瘍(Tumor)、リンパ節(lymph Node)、転移(Metastasis)から「TNM」とよばれ、胃癌取扱い規約によりこの進行度分類で病期が分けられます。
なお、胃がんの進行度分類には、がんの広がりを画像検査などの結果に基づいて推定する「臨床分類」と、手術で切除した病変から実際のがんの広がりを評価する「病理分類」があります(表1、2)。臨床分類は最初に治療方針を決める際に用いられ、病理分類は手術で切除した病変をもとに実際のがんの広がりを顕微鏡で評価した分類です。病気の予後の推定や手術後の治療方針を決定する際に用いられます。

表1胃がんの臨床分類

国立がん研究センターがん情報サービス
日本胃癌学会編「胃癌取扱い規約第15版(2017年10月)」(金原出版)より作成

表2胃がんの病理分類

国立がん研究センターがん情報サービス
日本胃癌学会編「胃癌取扱い規約第15版(2017年10月)」(金原出版)より作成

ステージ別の治療方針

胃がんの基本的な治療方針は、病変部を切除することです。切除の方法は「内視鏡治療(内視鏡的切除)」と「外科手術」に分けられます。これらの治療法と全身療法である「薬物療法」が胃がんの3大治療法になり、がんの深達度やリンパ節転移の有無によって選択されます(図5)

図5胃がんの治療の選択

国立がん研究センターがん情報サービス
日本胃癌学会編「胃癌治療ガイドライン医師用2018年1月改訂(第5版)」金原出版より作成

内視鏡治療とは、内視鏡で専用の処置具を使用しがんを切除する治療法で、がんが粘膜層までにとどまっていて、リンパ節やほかの臓器への転移の可能性がほとんどない早期の患者さんに行われます。なお、内視鏡治療でがんを取りきれなかった場合やリンパ節に転移している可能性がある場合には、外科手術を追加することもあります。
外科手術には、腹部に開けた小さな孔からカメラや器具を挿入してがんを切除する「腹腔鏡下手術」と、おなかを開いてがんを切除する「開腹手術」があります。外科手術は、がんが粘膜下層あるいはそれより深くまで達している場合に行われます。なお、薬物療法を行った後に手術を行う場合(術前補助化学療法)もあります。手術後の病理検査でステージがⅡかⅢの場合は薬物療法を行います(術後補助化学療法)。
がんが見つかった段階でほかの臓器にがんが転移している場合や術後の再発の場合は、薬物療法が主体となります。
実際にどの治療法を行うかは、患者さんの体の状態や年齢、希望なども含めて、担当医と相談して決めていきます。

Columnセカンド・オピニオン

診断や治療方法などについて、主治医以外の医師の意見を聞くことを、セカンド・オピニオンといいます。
胃がんでは、さまざまな治療法があります。そのため、担当医から勧められた治療法が果たして最適なものか理解や納得にとまどうこともあるでしょう。セカンド・オピニオンは患者さんの権利で、納得のいく治療を受けるために、セカンド・オピニオンを求めることができます。「がん拠点病院(がん診療連携拠点病院)」などセカンド・オピニオンを積極的に受け入れている医療機関もあります。
セカンド・オピニオンを受ける際には、検査データや画像、担当医の診断や治療方針を記した診療情報を担当医からもらい、それを持参しましょう。また、すでに治療を開始している場合でもセカンド・オピニオンを受けることができます。なお、セカンド・オピニオンを効率的に受けるために、何が疑問か、何を知りたいかを明確にしておくことが大切です。

監修者略歴
 

がん研究会有明病院
消化器外科 胃外科部長
布部 創也(ぬのべ そうや)先生

  • 1996年熊本大学医学部医学科卒業
  • 1996年京都府立医科大学附属病院  第二外科 研修医
  • 2000年国立がんセンター中央病院 レジデント、チーフレジデント
  • 2005年癌研究会有明病院(現 がん研究会有明病院)
    シニアレジデント
  • 2006年東京都立駒込病院 外科 医員
  • 2008年東京大学医学部附属病院 胃・食道外科 助教
  • 2010年がん研究会有明病院 消化器外科 医員
  • 2019年がん研究会有明病院 消化器外科 胃外科部長
  • 【資格】
  • 日本外科学会 専門医・指導医
  • 日本消化器外科学会 専門医・指導医
  • 日本内視鏡外科学会 技術認定医
  • 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
pagetop