肺がんの早期発見

2021年7月 公開 監修: 埼玉医科大学国際医療センター
呼吸器内科 教授 兼 通院治療センター長
解良 恭一 先生

肺がんとは

肺の構造

肺は右肺と左肺に分かれた構造をとっており、右肺は「上葉(じょうよう)」「中葉(ちゅうよう)」「下葉(かよう)」の3つの「肺葉(はいよう)」に、左肺は「上葉」と「下葉」の2つの肺葉に分かれています。
肺は、体の中に空気中から酸素を取り込み、二酸化炭素を排出する役割を担っています。呼吸によって口や鼻から入った空気は、気管を通って左右の肺に入り、さらに枝分かれして、気管支の先にある「肺胞」へ流入します。気管から左右に枝分かれしたものを「気管支」といい、太い気管支が細かく分かれて肺に入っていくあたりを「肺門」、肺門の先を「肺野」といいます(図1)。肺胞は小さな袋のようなもので、ここで酸素と二酸化炭素の交換が行われます。

図1肺の構造
図1:肺の構造

肺がんの原因とは?

私たちの体を構成する細胞は、必要なときにだけ増殖するように「遺伝子」でコントロールされています。しかし、この仕組みをコントロールしている遺伝子に異常(変異)が生じると、細胞は際限なく増殖するようになってしまいます。こうした際限なく増殖する細胞を「がん細胞」といい、それが集まったものを「がん」といいます。
肺がんの発症に関連する遺伝子は十分には解明されていませんが、喫煙は肺がんの最大の危険因子であることが知られており、喫煙者は非喫煙者に比べて肺がんになる危険性が男性で4.4倍、女性で2.8倍高いことが報告されています 1)。タバコを吸わない人でも、周囲に流れるタバコの煙を吸うことで(受動喫煙)、タバコの害を受けてしまうこともあります。そのほかに、アスベスト2)などの有害化学物質や大気汚染などの環境因子、肺がんの既往歴や家族歴、年齢3)なども肺がんを発症するリスクを高めると考えられています。

1) Wakai K, et al.: Jpn J Clin Oncol.36(5); 309-324. 2006
2) Hammond EC, et al.: Ann NY Acad Sci.330; 473-490. 1979
3) 公益財団法人がん研究振興財団. がんの統計’19, p.52 

どんな症状があらわれる?

初期の肺がんでは、症状があらわれることはほとんどありません。
進行すると、咳や痰、血痰(血が混じった痰)、呼吸困難(息切れ、息苦しさ)、胸の痛みなどの呼吸器症状や、体重減少などがあらわれることもありますが、これらの症状は必ずしも肺がんに特有なものではありません。
症状が似ているために肺がんと間違えやすい病気には、気管支炎、気管支拡張症、気管支ぜんそく、肺炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などがあります。
そのため、複数の症状を自覚したり、長引いたりして気になる場合は、医療機関を受診することが大切です。

肺がん検診はなぜ大切?

日本では1年間に男女合わせて約12万5000人(2016年)が肺がんを発症しており、さまざまながんの中で男性では胃がんに次いで4位、女性では4位となっています (表)4)。年齢別にみると、高齢になるほど肺がんの罹患率が高くなり、近年は男女とも70歳以上で罹患率が大きく増加しています(図2)3)
肺がんによる年間死亡者数は約7万4000人(2018年)で、これはさまざまながんの中でも第1位です5)。男女とも高齢になるほど肺がんによる死亡率は高くなり、近年は80歳以上の死亡率が増加しています(図3)6)
肺がんは初期症状があらわれにくく、進行すると治療による改善が得られにくくなります。しかし、肺がんの約半数は進行した段階で見つかっています7)。そのため、肺がん検診を積極的に受けて、早期に発見し、早期に治療することが大切です。

2016 年の患者数が多い部分
表:2016 年の患者数が多い部分

がんの統計’19 部位別がん罹患数(2016年),p23

図2肺がんの年齢階級別罹患率推移
図2:肺がんの年齢階級別罹患率推移
図3肺がんの年齢階級別死亡率推移
図3:肺がんの年齢階級別死亡率推移

がんの統計’19 年齢階級別がん罹患率推移p52より一部改変 がんの統計’19 年齢階級別がん死亡率推移p45より一部改変

3) 公益財団法人がん研究振興財団. がんの統計'19, p.52
4) 公益財団法人がん研究振興財団. がんの統計'19, p.23
5) 公益財団法人がん研究振興財団. がんの統計'19, p.40
6) 公益財団法人がん研究振興財団. がんの統計'19, p.45
7) 公益財団法人がん研究振興財団. がんの統計'19, p.29

監修者略歴

埼玉医科大学国際医療センター
呼吸器内科 教授 兼 通院治療センター長
解良 恭一(かいら きょういち)先生

  • 1997年 3月和歌山県立医科大学医学部卒業
  • 1997年 5月群馬大学医学部附属病院
    第一内科 研修医
  • 1999年 5月国立病院機構西群馬病院
    呼吸器科 医員
  • 2003年 4月前橋赤十字病院 呼吸器科 副部長
  • 2005年 4月群馬大学大学院医学系研究科
    病態制御内科学 医員
  • 2007年 7月群馬大学大学院医学系研究科
    博士課程修了
  • 2008年 4月静岡県立静岡がんセンター
    呼吸器内科 副医長
  • 2010年  10月群馬大学大学院医学系研究科
    病態制御内科学 医員
  • 2012年 5月群馬大学医学部附属病院
    腫瘍センター 助教
  • 2013年 8月群馬大学大学院医学系研究科 寄付講座
    がん治療臨床開発学 特任講師
  • 2016年 4月群馬大学大学院医学系研究科 寄付講座
    がん治療臨床開発学 特任教授
  • 2018年 5月埼玉医科大学国際医療センター
    呼吸器内科 教授
  • 2019年 4月埼玉医科大学国際医療センター
    通院治療センター長 兼任
  • 【資格】
  • 日本内科学会 認定医
  • 日本呼吸器学会 専門医・指導医
  • 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
  • 日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医
  • 【所属学会】
  • 日本臨床腫瘍学会
    (協議員、Best of ASCO委員会)
  • 日本内科学会
  • 日本呼吸器学会
  • 日本肺癌学会 評議員
  • 日本癌治療学会
  • 日本癌学会
  • 米国臨床腫瘍学会
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