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がん診療におけるコミュニケーション

大阪医科薬科大学 医学部 内科学講座腫瘍内科学 教授
藤阪 保仁 先生

大阪医科薬科大学病院は、安全で質の高い医療の提供を理念に掲げる特定機能病院です。がん領域においては、新薬開発に精通した臨床研究センターを有し、呼吸器内科・呼吸器腫瘍内科では、臨床試験や治験の成績(エビデンス)に基づいた治療を導入しています。今回は、大阪医科薬科大学 医学部 内科学講座腫瘍内科学 教授の藤阪保仁先生にお話をうかがいました。

林 龍二 先生

取材日:2021年4月

大阪医科薬科大学病院は、安全で質の高い医療の提供を理念に掲げる特定機能病院です。がん領域においては、新薬開発に精通した臨床研究センターを有し、呼吸器内科・呼吸器腫瘍内科では、臨床試験や治験の成績(エビデンス)に基づいた治療を導入しています。今回は、大阪医科薬科大学 医学部 内科学講座腫瘍内科学 教授の藤阪保仁先生にお話をうかがいました。

公開:2022年1月18日
更新:2025年1月

コミュニケーションを大切にしたがん診療

 私は国立がん研究センター中央病院に勤務していたときに、新しい治療法を患者さんに届けるための臨床試験の重要性を知りました。その後、内科治療開発部門のチーフレジデントとして、新しい薬を希望して全国から来られる患者さんとお話する機会が多くありました。なかには臨床試験の適格基準を満たさない患者さんがいらっしゃることもあり、最新治療の提供だけでなく、その患者さんが歩まれてきた道程を共有・肯定していくようなコミュニケーションがとても大切だと思うようになりました。そんな思いから、その後もサイコオンコロジー学会のCST(コミュニケーション・スキル・トレーニング)のファシリテーターを務めるなど、患者さんとのコミュニケーションを向上させていく取り組みを続けています。
 私は、患者さんに「いつでも何でも気楽に聞ける」と安心して診察室に入ってきてほしいと思っています。私が患者さんとお話するときに特に気を付けていることとして、「話のペース」があります。緊張して来院する患者さんは話のペースが早いことが多く、医師がそのペースに合わせてしまうと、緊張感が高まったりして良くない“場”が生まれます。患者さんに「伝えること」のみを主眼に置くのではなく、適切な話のペースで「一緒に理解する、共有する」ように心がけると、自然と良い“場”が生まれます。この良い“場”の設定が、患者さんと医療者との信頼関係構築の第一歩になります。

がん専門医(がん薬物療法専門医)としてのがん教育への取り組み

 平成26年に大阪府がん教育推進連絡協議会が立ち上がり、大阪府でも学校におけるがん教育が開始され、当初からその取り組みに積極的に参加してきました。実は、私が小学校6年生のとき、文集の将来の夢として書いたのは「小学校の先生」でした。がん教育の授業では、子どもたちの元気な顔も見られますし、楽しんで教壇に立っています。がん教育において大事なことは、子どもたちの成長の過程で「年齢を重ねても健やかに暮らし続けたい」という思いや「命の大切さ」をしっかり根付かせていくことだと考えています。

がん医療従事者・がん専門医としての今後の取り組み

 現在、さまざまな集学的治療(複数の治療法を組み合わせて行う治療)が導入され、難治がんでも長期生存の可能性が期待できる時代となっています。だからこそ、医学的問題だけでなく、さまざまな社会環境的問題が生じてきます。このような問題にも目を向けて、患者さんに多面的なサポートを続けることが、今後のがん医療従事者としての役割ではないかと思います。がん専門医は患者さんの一生の伴走者の1人として加わり、がん治療だけでなく、患者さん自身に寄り添っていく必要があると思っています。

患者さん、ご家族へのメッセージ

 がん患者さんのなかには、色々な不安を感じている方もいらっしゃると思いますが、今はがん治療と日常生活を両立させられる時代です。まずは怖がらずに病院に来てほしいと思います。一人一人の患者さんに治療のご提案や予後のお話をするにあたっては、患者さん自身が病状を理解できているか、辛いことやお悩みの点を把握できているか1つずつ確認しながら行っています。患者さんの意思決定を支援していくにあたり、必要な情報や意向を共有することで、個々の患者さんに適した医療を提供していきたいと思います。
 わからないことや不安なことがあれば、遠慮せずに主治医や専門医などの医療スタッフに相談していただき、一緒にがん治療と向き合いましょう。

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