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肺がん薬物療法の副作用を
正しく理解するために

関西医科大学附属病院 呼吸器腫瘍内科
教授倉田 宝保先生
准教授吉岡 弘鎮先生
診療講師金田 俊彦先生

※現所属 社会医療法人三栄会 ツカザキ病院 総合内科/呼吸器内科 部長

 肺がんの薬物療法は、新薬の開発が最も進んでいる分野の一つであり、近年、目覚ましい発展を遂げています。その一方で、使える薬が増えることにより、副作用も多岐に及ぶようになりました。
 予定通りに薬物療法を完遂し、その効果を最大限引き出すためには、副作用の管理が大きなカギとなります。薬物療法の効果や副作用の程度は患者さんによって個人差がありますので、主治医と相談しながら適切な治療法を選択していく必要があります。そのためには、患者さん自身が副作用に対する正しい知識を身につけることが大切です。対策を立てておけば気持ちに余裕をもって治療を受けられると思われます。
 肺がん患者さんが薬物療法を受けるにあたって、どのような知識を身につければよいでしょうか。肺がんの薬物療法の専門家である関西医科大学附属病院 呼吸器腫瘍内科の三人の先生方に伺いました。 【取材】2021年3月8日(月) ホテル アゴーラ 大阪守口

左から金田先生、倉田先生、吉岡先生

第3回検査でわかる症状と注意すべきことについて
公開日:2022年4月20日

 第3回では、検査でわかる主な副作用(薬剤性肺障害、腎機能障害、心機能や血液関連の副作用)について伺います。これらの副作用も自覚できる症状と同様に、すべての患者さんに起こるわけではありませんが、理解しておくことが大切です。
 終わりに、薬物療法に臨む肺がん患者さんへのメッセージもいただきました。

薬剤性肺障害

診療講師 金田 俊彦先生

金田先生 まれではありますが、抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬のいずれにおいても薬剤性の間質性肺障害が起こることがあります。息切れ、呼吸困難、せき、発熱といった症状が出た場合はすぐに連絡してください。これらの症状には心不全や放射線治療による放射線肺臓炎の可能性もありますが、感染症との鑑別も必要です。普通の風邪症状だけでなく、昨今では新型コロナウイルス感染症とも症状が似ているので、十分な評価が必要です。はっきりした原因が分からないまま悪化してしまうことがないように、私たちは患者さんへの十分な説明を心がけています。

腎機能障害

金田先生 腎機能障害は患者さん自身では症状がわかりにくい副作用の一つで、受診時の血液検査や尿検査でチェックすることになります。自覚症状があるとしたら、尿量が減ってきた、体重が増えた、むくみがあるなどが挙げられます。そのような変化は患者さん自身にも意識していただくことで早めに気づくことができるかもしれません。高齢の方やもともと腎機能が弱っている方にとっては特に注意が必要な副作用です。腎機能は一度悪くなるとなかなか戻らず、その後の薬物療法が難しくなるケースもあることを知っておいていただきたいと思います。

 
准教授 吉岡 弘鎮先生

心不全・不整脈・高血圧

吉岡先生 腎機能障害でも体重が増えて息切れしやすくなることがありますが、心不全も同様の症状なので、心不全が先行していないかどうかの鑑別が必要です。薬物療法開始前には、心電図、胸部X線画像などを確認し心臓の状態をチェックします。心合併症がある、あるいは疑われる患者さんは抗がん剤投与後の不整脈や心不全の発症リスクが高いと考えられますので、循環器内科と連携して精査することもあります。
 また、分子標的薬の一つである血管新生阻害剤は高血圧を発症するリスクがあります。高血圧は自覚症状がないので、血管新生阻害剤を投与する時には定期的に血圧検査を行います。場合によっては早めに降圧剤を処方してコントロールします。

血小板減少・貧血

吉岡先生 がん薬物療法による血小板減少は、ほとんどが抗がん剤による骨髄抑制を原因としています。血小板減少は好中球(白血球の一種)減少とほぼ同じタイミングで生じ、投与1週間〜2週間後がピークであることが多いです。血小板が減少するということは出血が止まりにくいということですから、第一にケガをしないことが重要で、特に頭部打撲には注意してください。
 抗がん剤治療前には貧血の有無の評価も重要です。赤血球の寿命は約120日であるため、初回の化学療法では問題とならなくても、治療を重ねるごとに徐々に進行するおそれがあるので定期的な血液検査を行い、確認します。

発熱性好中球減少症

倉田先生 発熱性好中球減少症の予防対策には、抗がん剤治療の1サイクル目からG-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)製剤を投与する方法があります。また、好中球が減少すると感染しやすくなるので、肺炎にならないように、発熱時には直ちに抗菌薬を投与します。

終わりに、肺がん患者さんへのメッセージをお願いします。

金田先生 肺がんは、非常に多くの薬剤が開発されており、近年では分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬を中心に高い効果を期待できる薬剤も登場しています。患者さんに前向きに治療に取り組んでいただく価値も上がっていると思います。ただ、副作用はつらい症状ですから、それといかに付き合っていくかが重要な課題となります。医療従事者に遠慮なく相談して、一緒に考えていきましょう。同じ治療が長く続くと、薬剤の効果より副作用のほうがつらくなる場合もあります。その治療を続けるかどうかについても、患者さんやご家族、そして主治医を中心とした医療従事者とで率直に話し合って検討することが大切だと考えています。

吉岡先生 肺がんの薬物療法は飛躍的に進歩しており、治療効果は向上していますが、その代わりに新しい副作用も出てきています。有効性が期待できる薬剤の効果を十分に発揮させるには、副作用対策を万全に行い、准教授 吉岡 弘鎮先生できるだけ長く治療を続けていくことが大切です。主治医には話しづらいことがあっても、医療従事者の誰かに相談していただければ対応してくれますので、遠慮せずに声を掛けてください。そうして副作用を早めにコントロールし、治療効果を確実に発揮させることを一緒に目指しましょう。

倉田先生 さまざまな副作用について説明しましたが、副作用の現れ方は薬剤の種類や患者さんの個々の状態によって異なります。また、すべての副作用が起こるわけではありません。分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬という、比較的新しい薬剤についても起こり得る副作用やその対処法が検討されています。心配なことがあればためらわずに医療従事者に相談し、決してネガティブにならずに一緒に治療していきましょう。

 肺がんの薬物療法は、あらゆるがん種の中でも特に開発が進んでおり、それだけに副作用も多様化しています。一方で、日常生活上での予防法や、悪化させないための処置も検討され、副作用対策も大きく進歩していることがわかりました。
 薬物療法を完遂するためには、患者さん自身も副作用について正しく理解することが大切です。不安があれば必ず主治医、看護師、薬剤師に相談して、迅速に対処していきたいものです。
 先生方、ありがとうございました。

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